南伊勢町古和のチリ地震津波No3
2月28日(日) 1:39
古和の町では、ところどころ人々が数人ずつ固まって話している。
むくだいめ屋の前でも数人話しているので、右手を挙げて合図をして通りすぎる。
しかし、至って平穏だ。
向こうから、自転車のおばやんが来た。
「ええかな?」
水道代の支払いである。
「730円やな?」
おばやんも 津波を気にしている様子はない。
隣のJにゃん宅の戸を開けて上がりこんだ。
Jにゃんは、横になっているだけで、気にしている気配もない。
「津波が来たら2階へ逃げる」
「50年まえ(チリ地震津波)は、えらかったけどな、そんに被害なかったなあ」
「44年の地震は、南方(戦線)にいっててな、知ったのは引き挙げてからさ」
「名古屋から乗った汽車で、錦へ帰る仲買いさんから聞いたんさ」
「柏崎で降りて、そっから古和まで歩いたんや。6月やったな」
「家の人に、帰還するってゆーてあったんか?」
「そんなことあらすか。そのまま家に帰ったんや」
「おばやん、ビックリしたやろ?」
「したやろなあ」
「お袋は、おかゆを食べさせてくれた」
「ご飯を食べさせたら死んでしもた者もおったらしいのでな」
「なんで?」
「ご飯って食べたことなかったもんで、食べ過ぎたんやろなあ」
「下地の方はすぐ山やもんでよかったけど、和久屋から向かいの方は津波が打ち寄せてな、引き波で家が流されたんや」
車で、南伊勢町古和浦漁業組合から宮さんに向かう。
組合の駐車場は空っぽ、と思いきや
白い乗用車が1台停まっていた。
港には、1槽の船が入って来た。