古和の大敷き網
「大敷きは、百人くらいおった」
「いつごろの話しや。戦争中か?」
「 いや、始まる前。14・5年ごろや。越中や土佐からも
よーけ来とってな、ドラム缶叩いて街をまわっとったなあ」
「なんでドラムかん叩くんや」
「仕事終わると酒飲んで唄をうたうんさ」
「古和の人もか?」
「古和の人はせなんだな」
「百人の大敷きゆーたらすごかったやろな?」
「網元は東京の人でな、代議士しとったな、
○○さんも、代議士なれば、チョウやトンボも鳥の内って、囃したてたな」
「どういう意味や?」
「あんまり頭ええことなかったんやろな」
「よーけ魚上がったんやろな。昔、市場にブリが一杯揚がったやろ?あれくらいか?」
「あんなもんやない。今、小屋があるやろ、あそこまで並んだ」
「よー覚えとんな。幼稚園の頃か?」
「いや、小学校になっとったな。大人が話しとるのが耳に入ってくるわさ」
やっとぬくたくなってきた3月19日、午後1時ごろ、古和でも長老のJにゃんと話す。
そのJにゃんも、今月30日で89才になる。
「記念に撮っとこか?」
めずらしく嫌がらなかった。