PCクラブログ

2006年からの日記です。備忘録です。生活に必要な知識、それを実現しょうと試み続けているのが本ブログです。未熟者ですがよろしくお願いします。

ホープ

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温かい日射しのある日、近所のJさんがタバコを買いに来る。
タスポカード導入してからすぐ申請したのだが、「届いてない」と言って、以来、手売りのままだ。
多分、ゴミと一緒に棄ててしもたに違いない。
それで、面倒くさいのだが、仕方なく手売りのままだ。

ゴミと分別がつかないのは無理もないのだが、来年89歳になるのだ。
この界隈では、もうこの歳まで生きている人はなく、来るたびに「もう、同級生は誰もおらんようになってしもたんや・・・」と言う話をする。「タバコを吸っている俺が生き残って、他が皆死んでしまったのは皮肉なものだ」ともいう。

冬の短い日射しを浴びながら、戦争の話に振り向ける。青春の思い出がよみがえるのか一瞬に顔が生き生きとする。目がこちらを向き、ニューギニア近くでの戦争体験を話しだす。「あんな遠いとこまでよー行ったもんなあ」。「食うもんなかったやろ?何食べとったんやな?」と聞くと「量マツは(パなんとかいう芋の一種)を朝昼晩さ。コメなんかなかったでな」 。

 1番組2番組だけで10人戦死したという。スラスラ戦死した人の名前が出てくる。みな20代だ。中には2人も戦死した家もある、と言う。俺は運がよかった、寿命があったんやなー、で戦記は終わる。
ブロック塀に背もたれしながら、日向ぼっこの2時ごろだ。

「背中へ絆創膏を貼ってくれんか?」と言うので、
腰のあたりから上着、セーター、腹巻、下着の重ね着を首までめくった。
大きな絆創膏を、肩甲骨の下辺りに2枚貼った。

Jさんは、ホープを6個買い、釣りの100円でライターを買う。
古ぼけた事務椅子に腰かけて、タバコに火をつける。
「同級生もみんな死んでしもたしなあ。俺ももうあかんじゃ」
というので

「Jにゃん、背中の皮膚、まだまだ張りがあんでぇ」
と言うと、顔を崩して笑った。
タバコの煙が、ゆっくりと漂い、鼻先で匂った。

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