子アジ
古和の栃ノ木前の堤防には、いつも誰か釣り客がいる。
通り過ぎようとしたが、この日は急ぐ用もなかったので、釣りの様子を見てみたい気になった。
傍らには、明らかに町外からと思われる車が止まっている。
堤防の上には、潮焼けした人が腰かけていた。
近くで竿をてにしている釣り客に近づく。
「釣れるかなー?」
「私は、あんまりよー釣らん。あの夫婦は上手いよ」
引き返して、堤防の上をスタスタ歩いて、おばさんに声を掛ける。
「小鯵がぼちぼちです。これから(午後4時から)ですわ」
釣り人は、振り返りもせず、いかにも、釣りなれている感じの返事がかえってきた。
そばのポリバケツの中には、確かに釣果である。
と、その時にも、釣れた気配がしたのか、竿を引き上げると、小魚が跳ねていた。
ここは入江なので、いつもベタナギなのだが、元々遠浅なのだ。
目の前は山々がせまり、行きかう船もなく、コトリとも音がしない。
古和湾を船で巡回して、魚群探知機で見ると、驚くほどの魚群が回遊しているのがわかる。
停留している船の上からでも、イカがタモですくえることもあるし、サザエも見えるし、いろいろな
魚が釣れる。