PCクラブログ

2006年からの日記です。備忘録です。生活に必要な知識、それを実現しょうと試み続けているのが本ブログです。未熟者ですがよろしくお願いします。

No.15 三の段に降りる(古和浦有地山)

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さすがにそれぞれの顔に疲労の色が見えていた。しばらく休憩することになった。思い思いに腰掛けながら、お茶を飲んだりした。野田さんが、例のかりんとうの袋を隣の人に手渡して、言った。
「みんな空けたって」

静寂な空気と光のなかで、鳥の鳴き声が響き合っていた。
南勢テクテク会の事務長さんらが、ここの整備について今後の打ち合わせとか話し合った。

話がまとまったところで、帰り道について、トモさんが話始めた。
「ここから三の段を下りて行きましょう。かなり急ですけど」。
 
みんな黙って地図を眺めた。有地山は古和では三の段と呼ばれている。三の段は平地である。その下に二の段、一の段がある。但し、その段までは急激な斜面だと云う。そこを下ろうというのである。

------地図には道がなかった。

私は、危険な匂いを嗅いだ気がした。トモさんは、ときどき危ない崖道を、さりげなく踏破コースにしたりする。踏破する前から、そういう一種の緊張感にとらえられることは、珍しいことではない。ある程度危険と隣り合わせなのが登山道整備。何の心配もない登山道は整備の必要もないというものだ、と自分に言い聞かせた。

目の前の杉林は45度もあろうかと思う程の斜面であった。私は前方に待ち伏せている危険に、一足ずつ近づいていくような気がした。根本には枯れ葉が布団のように積もっている。先頭の2人はリスのような素早さでずんずん降りていく。おそろしく足が達者だった。私たちは遅れてついていった。

杉の大木で日の光も届かず薄暗い。積もりに積もった枯れ葉で何度も足を取られ滑った。みんな転げるように降りた。遠くの山並みが見る見る高くなっていくのがわかった。薄闇に包まれた谷間に鳥の甲高いさえずりだけが響いた。こんな崖のような斜面がどこまで続くのかと思いながら、かれこれ20分程降りただろうか。
先頭の方の声が杉林に響き渡った。

-----三の段についたらしい。

そこは、今までとは別天地のようだった。昔ある人が、田圃にするため開墾したそうだ。濃い緑の樹木に囲まれた運動場程の広場は光にあふれ雑草が生えているだけだった。

-----ここはいいなぁ。朝は野鳥のさえずり、夜は虫の音などを聞いて暮すのも風流ではないかとふと思った。
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