PCクラブログ

2006年からの日記です。備忘録です。生活に必要な知識、それを実現しょうと試み続けているのが本ブログです。未熟者ですがよろしくお願いします。

No.17 不動滝(南伊勢町古和浦)に到着。

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不動滝は初夏の光をたたえながらしぶきをあげている。
大杉の間を通り抜けるとクロさんたちが橋にさしかかっていた。渡り終わるのを見送ってから私も足を返した。橋の真ん中に立つと滝の水量に圧倒される。二股に分かれた流れがすさまじい勢いで合流し轟音に人の声がかき消された。

木の芽が吹く深い木立や岩肌に薄い光がさし、傍らには苔むした小屋があった。あたりには荘厳な空気が漂っているようで、身の引き締まるような思いがした。
暮れかけている光の中にみんな集まっていた。それぞれ、憔悴した顔色の中にも安どの気持ちが表れていた。青葉に囲まれたほの暗い樹の陰で、トモさんと野田さんが笑みを浮かべながら話した。

「右は男滝、左は女滝って言うんやって。飲んでみたら?この水美味いよ!」
吐き出した紫煙がゆっくりと谷間を舞い上がり巨木に吸い込まれていった。
それぞれが思い思いに柄杓ですくい上げて水を飲んだ。
吟味するような眼が笑顔に変わった。

私は、-----滝の写真だけは撮っておこうと思っていた。
手の傷を気にしながらファインダーを覗きこむと、右下に中野さんの姿があった。シャッターを押した。時刻が4時9分を表示していた。こころなしか、ぶれてしまった。
----それでいいのだ、私の「不動滝」この目に焼き付けておこうと前から決めていたので
撮り直そうという気にはなれなかった。

日が暮れるまでまだ間があった。私も、柄杓をもって滝壺近くに降りた。純白の水の塊が吹きあがってくるようだ。轟音は不思議なことに耳障りではなく、むしろ柔らかい響きに変わっていた。流れに柄杓を入れると、その勢いに思わず柄を握りしめた。

柄杓の水を口に含み飲み込んだ。50年の光と風に熟成されたような香りが喉、胃袋に広がった。1杯、2杯、3杯・・・。
私は、今、ようやく山歩きが終わったのを感じた。

---終了
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