PCクラブログ

2006年からの日記です。備忘録です。生活に必要な知識、それを実現しょうと試み続けているのが本ブログです。未熟者ですがよろしくお願いします。

古和の夏、祇園の夏

 

 

7月14日 土曜日 晴れ

7月の第2土曜日。今年も祇園がやってきた。

雨が心配だったが、

木々の緑も鮮やかな山の端に薄い青空が見え隠れし雲も明るい。

甲高いセミの大合唱が鳴りやまず、蒸し暑い夏、それでいて海風が涼しい

古和の夏、祇園の夏がやってきた。

パパーン。

打ち上げ花火が鳴った。

そろそろ御舟の吊り込みが通る。

テケテケテン。浜の方から聞こえてきた。

その音が少しずつ少しずつ大きくなってくる。

 

 



御船が沖から帰って来たのを見計らっていたかのように
「シュルルルル~」
闇夜の空に閃光。
「ドドドーン」
四方の山々が共鳴する。
降り注ぐ光の雨
海面が鏡となって光り輝く。
笠灯と赤提灯を掲げた御船と海を照らす。
鎮魂の花火でもある。

 



古和の祇園祭は、「疫病や天変地異、海難防止」の祈祷が込められているのだろう。
疫病は過去のものとなった。天変地異については、例えば地震津波が起きるのを防ぐことができないのは科学が進んだ現代では皆わかってきている。

 

しかし、海難は不慮のできごとである。

今年も同級生が 一人、遭難した。
夜、一人甲板にでてきたのだろうか。不測の出来事で海に落ちたか。船は夜間でも走り続けるからそのまま朝まで気づかないことってありうる。


落ちたT君は暗い海の上ではなすすべもなかったのだろう。居ないのに気づき、4日間、周辺を捜索したが見つからなかった、と後から聞いた。


てっきり浜島で漁師をしていると思っていたので、これを聞いて驚いた。最近、Tくんの兄さんが、口数が少ないのはそのせいだったのかと今になって思い当たるこのごろ。

とにかく唄が上手かった。幼稚園時代には、傍で童謡を歌ったのを聞いたことがある。
その伸びやかな高音はもって生まれたものだった。

 

それから20数年後の同窓会の宴会の席では鰹船に乗っている、と話した。
そこで覚えたのが「♪ おいらの船は300トン」


”♪港出たなら鰹を追って 越える赤道南方航路 おいらの船は300トン”

 

伸びのある高音とリズム感は健在で、その潮風声は演歌というより「労働歌」であった。 これこそが「歌」なのだと、つくづく思ったものだ。もういちど聴いてみたかった・・・・・。
T君のご冥福をお祈りします。

 

 

 



山の内を出た御船は、ひとしきり練ったあと登り町、下地町2番組、下地町1番組を通り、古和浦漁業前の広場に来た。ここで御船は一時置かれることになった。

 

「潮が低いんでな、ちょっと待っとんのさ」
堤防のねき、提灯灯りだけの暗闇。


人混みの中で氏子のキクジさんが笑みを浮かべながら話している。広場は一時の喧騒から一転し飛び交うのは屋台の出店に群がる人々の声。

30分後、再び吊りあげる。
岸壁に横付けされた船に乗せるべくソロリソロリ前に進む。小太鼓・大太鼓のバチがやむことはことはない。


パチパチパチ
拍手が巻き起こった。
「うまいこと乗ったにゃー」
おばやんも安堵の声をもらした。

 



祇園の夏、屋台のテントが軒を並べる。
古和では、今でも多くの小売店が店を続けている。
飲食店、海産物店、日用品店などがまだまだ頑張っている。


都市では、今やどこでもコンビニにとって代わってそれこそどこでも同じ店構えで何の風情もないが古和には昔からのたたずまいを残している店が何軒もある。つまりコンビニが無い町。


先祖代々受け継いできた店を、当り前に受け継いでいるだけだ。
昨年の祇園祭では、ここの生ビール(ジョッキ)を2杯のんだかな?
お陰で酔っぱらってしまった。

 

今年は自重。代わりにタコ焼きの青海苔が気になって「一個ちようだい!」
「ハイ、お父さん!」
(そうだった。私は老人なのだ)


家に帰り、たこ焼きを肴に缶ビールの蓋に親指をかける。
いいビールだ。麦がよく成熟している。
これが発泡酒との違いなんだなぁ。

 

滑らかな舌触り。
口一杯に含み、ゴクリと咽喉を通ってゆくたび麦が芦浜の崖から崩れゆくような
それでいて不動さんの男滝のしぶきのような爽やかさである。

 

咽喉から胃に送ってみると子どもらのカラオケが風に乗ってくる。
これも古和の祇園祭

 


古和の祇園祭も御船が還って岸壁に横付けされ、打ち上げ花火が夜空を彩り
最後の仕掛け花火で幕となる。


ここで、祭りの終わりを惜しむかのような催しが「カラオケ」である。
シゲさんが司会をする。
トップは、祇園祭にふさわしい「祭り」である。


「これはすごい声だ!」
紛れもない、「潮風の声」だ。
街の人にはこういう声は出せない。

 

歌うのはナオさん。76歳。古和には、こういう潮風声の美声で唄う人が多い。
これだけは町の人には真似ができない。子どもらも大人に負けない。その堂々とした歌いっぷりはむしろ大人顔負けである。
みんなうまい。上手すぎる。

 

 

 

 

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